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2016.08.24 Wed
県立高校のテニス部の屋外の練習中に部員が倒れて心停止となり重度の後遺症が生じた事故について顧問の教諭の注意義務違反を認めて損害賠償金の支払を命じた事例
県立高校のテニス部の屋外の練習中に部員が倒れて心停止となり重度の後遺症が生じた事故について,原判決を取り消し,熱中症の罹患による重度の心筋障害が心停止の原因であると認め,顧問の教諭の注意義務違反を認めて損害賠償金の支払を命じた事例

大阪高等裁判所平成27年1月22日判決
判例時報2254号27頁

ア 校外での練習への立会義務違反の有無について
   控訴人は,本件事故を予見できたにもかかわらず,自ら本件事故当日の部活動に立ち会うことなく,また,代わりに立ち会う教諭を手配することをしなかったことから,教諭には,立会義務違反があると主張する。
   課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることにかんがみれば,何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別,そうでない限り,顧問の教諭としては,個々の活動に常時立ち会い,監視指導すべき義務までを負うものではないと解するのが相当であり,これは校外での部活動でも基本的に変わるものではない。

イ 生徒の体調等に配慮した練習軽減措置等の義務違反の有無について
 顧問が練習メニュー,練習時間等を各部員に指示しており,各部員が習慣的にその指示に忠実に従い,練習を実施しているような場合には,顧問としては,練習メニュー,練習時間等を指示・指導するに当たり,各部員の健康状態に支障を来す具体的な危険性が生じないよう指示・指導すべき義務があると解するのが相当である。
 熱中症の危険因子としては,スポーツの強度や負荷の程度が重要であることはいうまでもないが,このほか,①気温・湿度,②暑さに対する慣れ(暑熱馴化),③水分補給,④透湿性・通気性の良い帽子・服装の着用,⑤生活習慣(睡眠不足,風邪,発熱,下痢などの体調不良等)が発症に影響を及ぼす要因になると考えられる。
 平日の練習が午後4時から午後6時30分までであったものが,それを超過する3時間程度のものになっていた上,通常の練習の時間帯よりもより日差しが強くなりやすい時間帯に設定されたことを考慮すると,その練習メニューは,女子高校生である部員らに対する負荷の程度は相当に重いものであったというほかない。
 さらに,本件練習当日は,本件高校の定期試験の最終日であり,生徒である部員らがその試験勉強のために十分な睡眠をとることができていない可能性があることは教諭も認識していたことが認められる。
 また,本件事故当日は初夏であり,既に前日等において当該地域では25度を超える気温となっており,当日は天候も良く,本件テニスコート内の気温が上昇して30度前後となるであろうこと,本件テニスコート内にはめぼしい日陰もなかったこと,控訴人が帽子を着用していなかったことについても,練習当初の約30分間指導していた教諭は認識し,少なくとも十分に認識し得たといえる。加えて,当時キャプテンになったばかりであった控訴人にとっては,本件事故当日は,教諭がほとんど立ち会わない中でキャプテンとして部員らを指示しながら練習をした初めての日であるから,その練習の配分の指示や段取り等に馴れていなかったと考えられ,その真面目な性格に鑑みても,教諭の事前のメモによる指示に忠実に従い,無理をしてでも,率先して練習メニューをこなそうとすることが教諭において想定できたと認められる。
 以上の各事情を踏まえると,本件練習に立ち会うことができず,部員の体調の変化に応じて時宜を得た監督や指導ができない以上,教諭においては,控訴人を含めた部員らの健康状態に配慮し,本件事故当日の練習としては,通常よりも軽度の練習にとどめたり,その他休憩時間をもうけて十分な水分補給をする余裕を与えたりするなど,熱中症に陥らないように,予め指示・指導すべき義務があったといえる。
  それにもかかわらず,教諭は,通常よりも練習時間も長く,練習内容も密度の高いメニューを控訴人に指示した上,水分補給に関する特段の指導もせず,水分補給のための十分な休憩時間を設定しない形で練習の指示をしていたことが認められる)。
 したがって,教諭は,上記義務に違反したものというほかない。

顧問教諭に、練習常時立ち合い義務があることは否定しましたが、生徒の体調等に配慮した練習軽減措置等の義務のあることは認め、熱中症の危険因子に照らして、当日の練習軽減措置義務違反を認定しました。





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教育・学校    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2016.08.16 Tue
寺院境内墓地において、寺院の定める方式に従い墓地を使用する旨の合意があっても、その拘束力は墓地使用権を承継した者には及ばないとし、承継者による無典礼の方式による遺骨の埋蔵を拒絶することはできないとされた事例
 寺院境内墓地において、寺院の定める方式に従い墓地を使用する旨の合意があっても、その拘束力は墓地使用権を承継した者には及ばないとし、承継者による無典礼の方式による遺骨の埋蔵を拒絶することはできないとされた事例

宇都宮地方裁判所平成24年2月15日判決
判例タイムズ1369号208頁

主文
 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の墓地内の別紙図面の墓地区画への無典礼の方式による別紙遺骨目録記載の遺骨の埋蔵を妨害してはならない。

理由
 本件墓地は寺院墓地であり、その墓のほとんどは浄土真宗本願寺派の典礼に従い使用されてきたことが認められ、原告の祖先が被告との間で本件墓地使用権の設定を合意するに当たっても、被告の定める典礼の方式に従い墓地を使用するとの黙示の合意が成立したものと認めるのが相当である。
 しかしながら、本件墓地使用権を承継した者が異なる宗派となった場合にまで上記の黙示の合意の拘束力が及ぶかどうかについて、これを定めた墓地使用規則はなく、また、その場合にも被告の典礼の方式に従うとの慣行があったことを認めることもできない。以前は、いくつかの異宗派の者が、その宗派の定める典礼の方式により本件墓地内に墓石を設置し、遺骨を埋蔵していても、被告が寺として異議を述べた事情は認められない。そして、原告も、浄土真宗本願寺派とは異なる題目の墓石を設置し、法名の授与を受けずに遺骨を埋蔵していたものである。
 以上によれば、上記の黙示の合意の解釈として、本件墓地使用権を承継した者が異なる宗派となった場合に、その者に対し被告の属する浄土真宗本願寺派の典礼の方式に従うことを求める効力があるとするのは困難であり、その者が浄土真宗本願寺派とは異なる宗派の典礼の方式を行うことを被告が拒絶できるにすぎないと解するのが相当である。


 寺院境内墓地においては、墓地使用はその寺院の檀信徒(檀家と信徒)であることが前提となっていることが通常である。墓地使用権者が後に改宗した場合、墓地使用権を失うのかという問題が発生する。
 
津地方裁判所昭和38年6月21日判決(下級裁判所民事裁判例集14巻6号1183頁)は、
「従来から寺院墓地に先祖の墳墓を所有するものからの埋葬蔵の依頼に対しては寺院墓地管理者は、その者が改宗離檀したことを理由としては原則としてこれを拒むことができない。」
 としつつ
 典礼の方式については、
「埋葬蔵が宗教的典礼を伴うことにかんがみ、右埋葬蔵に際しては寺院墓地管理者は自派の典礼を施行する権利を有し、その権利を差し止める権限を依頼者は有しない。
 従つて(1)異宗の典礼の施行を条件とする依頼(2)無典礼で埋葬蔵を行うことを条件とする依頼(異宗の典礼は施行しないが、当該寺院の典礼の施行も容認しない趣旨の依頼)
 このような依頼に対しては、寺院墓地管理者は自派の典礼施行の権利が害されるということを理由にしてこれを拒むことができる。」
としている。

  宇都宮地方裁判所平成24年2月15日判決は、承継者が改宗した場合には無典礼の方式による遺骨の埋蔵を拒絶することはできないとし、津地方裁判所昭和38年6月21日判決とは異なる判断をしたことになろう

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2016.07.14 Thu
農業用水路転落事故
近年、農業用水路への転落事故が発生し、かけがえのない命が失われています
農業用水路は法定外公共物にあたり、その維持管理の責任は地方自治体にあります

農業用水路の設置管理を問う事例がありますが、裁判所の判断は分かれています

農業用水路は、稲の成育に必要な水温を保つ必要があることや
農業従事者が取水しやすいようにすることから原則は開渠で、転落防止柵も設置されない
また、稲の成育を阻害しないようにするために夜間の照明設備も設置されないのが原則である

横浜地方裁判所平成12年11月7日判決
本件用水路には、蓋、柵などの転落防止施設が設けられておらず、照明設備も設置されていなかったが
通常の利用方法の範囲内では、本件用水路に転落することはないものと認められる
管理者には用水路の設置管理に瑕疵はない

富山地方裁判所平成26年9月24日判決
平成15年以前は周辺は田んぼで主たる利用者は近隣の耕作者であり、
本件水路を越えて耕作地に進入する者もこれらの者に限られていた。
通行時間は日中であり、夜間の通行は見込まれていないことから、
本件水路への転落防止設備を設けなくてもさしたる問題はなかった。
しかし、その後市街化が進み、24時間営業の店舗が開店したのであるから、
管理者としては、通行状況の変化を把握し
本件側溝に蓋を設置するなどの対応を執るのに十分期間があった
本件水路は通常有するべき安全性を欠いていた
管理者には水路の設置管理に瑕疵があった




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事故    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2016.05.26 Thu
中学校生徒が柔道部の顧問教諭との乱取り稽古中に重傷を負った事故について、指導に見せかけた暴行制裁を加えたという故意があったとまでは認められないものの、顧問教諭の過失があるとされた事例
 中学校生徒が柔道部の顧問教諭との乱取り稽古中に重傷を負った事故について、指導に見せかけた暴行制裁を加えたという故意があったとまでは認められないものの、顧問教諭の過失があるとされた事例
 横浜地方裁判所平成23年12月27日判決 (原告生徒外、被告横浜市外)
判例タイムズ1378号122頁

 柔道は技能を競い合う格闘技であり、本来的に一定の危険が内在しているから、学校教育としての柔道の指導、特に、心身ともに未発達な中学の生徒に対する柔道の指導にあっては、その指導に当たる者は、柔道の試合又は練習によって生ずるおそれのある危険から生徒を保護するために、常に安全面に十分な配慮をし、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務を負う(最高裁平成6年(オ)第1237号 同9年9月4日第1小法廷判決・裁判集民事185号63頁参照)。

 柔道の死亡事故の60~70%以上が、急性硬膜下血腫を原因としていると認められる。また、柔道は格闘技であり、死亡や重大な傷害が生じる危険のあることは、一般的に知られているところである(公知の事実)。

 被告教諭は、絞め技により、原告を「半落ち」状態に陥らせ、その後、覚醒させたものの、原告は、意識がもうろうとし、通常時よりも受け身がとりづらく、また、首の固定が十分ではないため頭部に回転力が加わりやすい状態にあったのであり、そのような状態で乱取りを続ければ、重大な傷害の結果が生じる危険性があったものということができる。そして、そのことを柔道の指導者である被告教諭は認識することができたものというべきである。それにもかかわらず、被告教諭は、原告一郎が上記の状態にある中で、原告を休ませることなく、そのまま乱取りを再開し、3セット目の終了のブザーが鳴った後も、組み合ったまま、4セット目に入り、乱取りを行っており、その結果、原告の傷害を生じさせている。
 以上からすると、上記「半落ち」後にそのまま乱取りを再開すれば、原告に重大な傷害結果が生じ得ることは、被告教諭において、予見することができたといえる。そして、原告が中学3年生であることに照らすと、教師である被告教諭においては、乱取りを中止したり、休憩を取らせるなどして、原告の意識が正常な状態に回復するのを待つべき義務を負っていたといえる。しかるに、被告教諭は、そのような措置を取らず、そのまま乱取りを再開し、原告に傷害を負わせたのであるから、上記義務を怠った過失があると認められる。


 部活の顧問教諭が生徒に対し故意に制裁を加えたという主張を裁判で立証することは、閉鎖的な空間である学校部活を舞台とする以上、たいへん困難であろう。
 柔道の死亡事故の60~70%以上が、急性硬膜下血腫を原因としていると認められ、柔道は格闘技であり、死亡や重大な傷害が生じる危険のあることは公知の事実であるとして、顧問教諭の過失を認定している。

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2016.04.05 Tue
軍事オンブズマン
 海上自衛隊員が護衛艦乗船中に自殺したことにつき、上官の誹謗的言辞が指導の域を超えるものであるとして、国の安全配慮義務違反が認められた事例において、遺族による不法行為の再発予防請求権に基づく「軍事オンブズパーソン制度」の創設請求は認められないとされた事例

福岡高等裁判所平成20年8月25日判決
判例時報2032号52頁

 軍事オンブズパーソン制度の創設請求の可否について
 控訴人らは、不法行為の被害者自身及びこれと一定の関係に立つ者は、不法行為の再発予防請求権を有すると解すべきであると主張するが、国家賠償法及び民法その他の規定に照らしても、上記のような権利を基礎づけると認められる規定は見当たらないから、本件損害に対する賠償としては上記の金銭賠償によるほかなく、控訴人らの上記主張は採用できない。なお、被控訴人は、控訴人らの軍事オンブズパーソン制度の設置請求に係る訴えの却下を求めているが、同請求は、不法行為(国家賠償法1条)の成立を前提に、その効果として同制度の設置を求めるものであるから、訴訟要件を欠くものとはいえない。


 軍事オンブズマン制度は、スウェーデン・フィンランド・ノルウェー・デンマークやドイツで兵士の待遇改善やいじめ防止を目的に導入されている。
ドイツでは連邦議会が軍事オンブズマン(防衛監察委員)を任命し、兵士は上官を通さず監察委員へ通報する権利が保障され、監察委員は事前通告なしで軍施設に立ち入り調査する権限があるとされている。

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