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2016.07.14 Thu
農業用水路転落事故
近年、農業用水路への転落事故が発生し、かけがえのない命が失われています
農業用水路は法定外公共物にあたり、その維持管理の責任は地方自治体にあります

農業用水路の設置管理を問う事例がありますが、裁判所の判断は分かれています

農業用水路は、稲の成育に必要な水温を保つ必要があることや
農業従事者が取水しやすいようにすることから原則は開渠で、転落防止柵も設置されない
また、稲の成育を阻害しないようにするために夜間の照明設備も設置されないのが原則である

横浜地方裁判所平成12年11月7日判決
本件用水路には、蓋、柵などの転落防止施設が設けられておらず、照明設備も設置されていなかったが
通常の利用方法の範囲内では、本件用水路に転落することはないものと認められる
管理者には用水路の設置管理に瑕疵はない

富山地方裁判所平成26年9月24日判決
平成15年以前は周辺は田んぼで主たる利用者は近隣の耕作者であり、
本件水路を越えて耕作地に進入する者もこれらの者に限られていた。
通行時間は日中であり、夜間の通行は見込まれていないことから、
本件水路への転落防止設備を設けなくてもさしたる問題はなかった。
しかし、その後市街化が進み、24時間営業の店舗が開店したのであるから、
管理者としては、通行状況の変化を把握し
本件側溝に蓋を設置するなどの対応を執るのに十分期間があった
本件水路は通常有するべき安全性を欠いていた
管理者には水路の設置管理に瑕疵があった




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2016.06.14 Tue
農業災害補償法が定める農作物共済当然加入制が憲法22条1項に違反しないとされた事例
 農業災害補償法が定める農作物共済当然加入制が憲法22条1項に違反しないとされた事例
最高裁判所平成17年4月26日判決
判例タイムズ1182号152頁

 法が、水稲等の耕作の業務を営む者でその耕作面積が一定の規模以上のものは農業共済組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立するという仕組み(法15条1項、16条1項、19条、104条1項。以下「当然加入制」という。)を採用した趣旨は、国民の主食である米の生産を確保するとともに、水稲等の耕作をする自作農の経営を保護することを目的とし、この目的を実現するため、農家の相互扶助の精神を基礎として、災害による損失を相互に分担するという保険類似の手法を採用することとし、被災する可能性のある農家をなるべく多く加入させて危険の有効な分散を図るとともに、危険の高い者のみが加入するという事態を防止するため、原則として全国の米作農家を加入させたところにあると解される。

法が制定された昭和22年当時、食糧事情が著しくひっ迫していた一方で、農地改革に伴い多数の自作農が創設され、農業経営の安定が要請されていたところ、当然加入制は、もとより職業の遂行それ自体を禁止するものではなく、職業活動に付随して、その規模等に応じて一定の負担を課するという態様の規制であること、組合員が支払うべき共済掛金については、国庫がその一部を負担し、災害が発生した場合に支払われる共済金との均衡を欠くことのないように設計されていること、甚大な災害が生じた場合でも政府による再保険等により共済金の支払が確保されていることに照らすと、主食である米の生産者についての当然加入制は、米の安定供給と米作農家の経営の保護という重要な公共の利益に資するものであって、その必要性と合理性を有していたということができる。

 もっとも、その後、社会経済の状況の変化に伴い、米の供給が過剰となったことから生産調整が行われ、また、政府が米穀管理基本計画に基づいて生産者から米を買い上げることを定めていた食糧管理法は平成7年に廃止されるに至っている。しかしながら、上告人が本件差押えに係る共済掛金等の支払義務を負った当時においても、米は依然として我が国の主食としての役割を果たし、重要な農作物としての地位を占めており、その生産過程は自然条件に左右されやすく、時には冷害等により広範囲にわたって甚大な被害が生じ、国民への供給不足を来すことがあり得ることには変わりがないこと、また、食糧管理法に代わり制定された主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成15年法律第103号による改正前のもの)は、主要食糧の需給及び価格の安定を図ることを目的として、米穀の生産者から消費者までの計画的な流通を確保するための措置等を講ずることを定めており、災害補償につき個々の生産者の自助にゆだねるべき状態に至っていたということはできないことを勘案すれば、米の生産者についての当然加入制はその必要性と合理性を失うに至っていたとまではいえないと解すべきである。

 このように、上記の当然加入制の採用は、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができ、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、上記の当然加入制を定める法の規定は、職業の自由を侵害するものとして憲法22条1項に違反するということはできない。


「農業共済組合」とはなんでしょうか ご存知でしょうか
「農業協同組合」(農協、全国農業協同組合中央会、JA)とは違います

全国農業共済協会 NOSAIという団体です

 当然加入制は、水稲20~40アール(北海道は30~100アール)、麦10~30アール(北海道は40~100アール)以上を耕作している農家に、共済保険加入を強制していることです
強制加入ですので、掛金を払わないと、滞納処分として差押を受けます

 この制度が、憲法22条1項の保証する営業の自由を侵害するかどうか争われたわけです


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2016.05.26 Thu
中学校生徒が柔道部の顧問教諭との乱取り稽古中に重傷を負った事故について、指導に見せかけた暴行制裁を加えたという故意があったとまでは認められないものの、顧問教諭の過失があるとされた事例
 中学校生徒が柔道部の顧問教諭との乱取り稽古中に重傷を負った事故について、指導に見せかけた暴行制裁を加えたという故意があったとまでは認められないものの、顧問教諭の過失があるとされた事例
 横浜地方裁判所平成23年12月27日判決 (原告生徒外、被告横浜市外)
判例タイムズ1378号122頁

 柔道は技能を競い合う格闘技であり、本来的に一定の危険が内在しているから、学校教育としての柔道の指導、特に、心身ともに未発達な中学の生徒に対する柔道の指導にあっては、その指導に当たる者は、柔道の試合又は練習によって生ずるおそれのある危険から生徒を保護するために、常に安全面に十分な配慮をし、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務を負う(最高裁平成6年(オ)第1237号 同9年9月4日第1小法廷判決・裁判集民事185号63頁参照)。

 柔道の死亡事故の60~70%以上が、急性硬膜下血腫を原因としていると認められる。また、柔道は格闘技であり、死亡や重大な傷害が生じる危険のあることは、一般的に知られているところである(公知の事実)。

 被告教諭は、絞め技により、原告を「半落ち」状態に陥らせ、その後、覚醒させたものの、原告は、意識がもうろうとし、通常時よりも受け身がとりづらく、また、首の固定が十分ではないため頭部に回転力が加わりやすい状態にあったのであり、そのような状態で乱取りを続ければ、重大な傷害の結果が生じる危険性があったものということができる。そして、そのことを柔道の指導者である被告教諭は認識することができたものというべきである。それにもかかわらず、被告教諭は、原告一郎が上記の状態にある中で、原告を休ませることなく、そのまま乱取りを再開し、3セット目の終了のブザーが鳴った後も、組み合ったまま、4セット目に入り、乱取りを行っており、その結果、原告の傷害を生じさせている。
 以上からすると、上記「半落ち」後にそのまま乱取りを再開すれば、原告に重大な傷害結果が生じ得ることは、被告教諭において、予見することができたといえる。そして、原告が中学3年生であることに照らすと、教師である被告教諭においては、乱取りを中止したり、休憩を取らせるなどして、原告の意識が正常な状態に回復するのを待つべき義務を負っていたといえる。しかるに、被告教諭は、そのような措置を取らず、そのまま乱取りを再開し、原告に傷害を負わせたのであるから、上記義務を怠った過失があると認められる。


 部活の顧問教諭が生徒に対し故意に制裁を加えたという主張を裁判で立証することは、閉鎖的な空間である学校部活を舞台とする以上、たいへん困難であろう。
 柔道の死亡事故の60~70%以上が、急性硬膜下血腫を原因としていると認められ、柔道は格闘技であり、死亡や重大な傷害が生じる危険のあることは公知の事実であるとして、顧問教諭の過失を認定している。

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2016.04.05 Tue
軍事オンブズマン
 海上自衛隊員が護衛艦乗船中に自殺したことにつき、上官の誹謗的言辞が指導の域を超えるものであるとして、国の安全配慮義務違反が認められた事例において、遺族による不法行為の再発予防請求権に基づく「軍事オンブズパーソン制度」の創設請求は認められないとされた事例

福岡高等裁判所平成20年8月25日判決
判例時報2032号52頁

 軍事オンブズパーソン制度の創設請求の可否について
 控訴人らは、不法行為の被害者自身及びこれと一定の関係に立つ者は、不法行為の再発予防請求権を有すると解すべきであると主張するが、国家賠償法及び民法その他の規定に照らしても、上記のような権利を基礎づけると認められる規定は見当たらないから、本件損害に対する賠償としては上記の金銭賠償によるほかなく、控訴人らの上記主張は採用できない。なお、被控訴人は、控訴人らの軍事オンブズパーソン制度の設置請求に係る訴えの却下を求めているが、同請求は、不法行為(国家賠償法1条)の成立を前提に、その効果として同制度の設置を求めるものであるから、訴訟要件を欠くものとはいえない。


 軍事オンブズマン制度は、スウェーデン・フィンランド・ノルウェー・デンマークやドイツで兵士の待遇改善やいじめ防止を目的に導入されている。
ドイツでは連邦議会が軍事オンブズマン(防衛監察委員)を任命し、兵士は上官を通さず監察委員へ通報する権利が保障され、監察委員は事前通告なしで軍施設に立ち入り調査する権限があるとされている。

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2016.03.06 Sun
大阪市の外郭団体が、従業員に対し、大阪市人事委員会報告に準拠して賃金減額を行ったことが違法であるとし、差額賃金の支払を命じた事例
大阪市の外郭団体が、従業員に対し、大阪市人事委員会報告に準拠して賃金減額を行ったことが違法であるとし、差額賃金の支払を命じた事例

大阪高等裁判所平成18年12月22日判決 判例集未登載 河村学弁護士による記事 

大阪運輸振興株式会社は、大阪市交通局が実質100%出資する大阪市の外郭団体である
業務としては、大阪市営地下鉄の車庫業務、大阪市営バスの運行受託、案内所業務、乗車券販売業務などを行っている
大阪市の退職者の雇用確保等のために市が主導して設立した株式会社であり、大阪市が実質的な支配株主で、かつ、会社取締役や役職者は派遣職員とOBで占められている。同社は、大阪市の監理団体とされ、経営に関し大阪市が指導権限を有し、その内容については市議会への報告が義務づけられている。

 大阪運輸振興の従業員の給料は、経歴加算された初任給基準に、年2回一定額の昇給がなされる旨の規定があるのみで、賃金減額の方法や新規採用者以外の賃金が初任給基準により算定されるという規定はなかった。同社従業員のベースアップについては、大阪市職員の給与についての人事委員会報告の支給率に準拠、連動して増額改定が行われてきた。

 就業規則の下位規範である初任給基準を大阪市職員の給与についての人事委員会報告の支給率に準拠、連動して改定することにより一方的に減額できるかというのが争点となった

 大阪地方裁判所平成18年3月8日判決は、減額が合法であると判決した。
 まず、在籍従業員の賃金改定については、従前の賃金額に一定率を乗じることによって画一的に改定されてきたこと、及び、就業規則の下位規範である初任給基準を改定することにより、その改定された支給率の内容を在籍従業員の賃金にも反映させるという労使慣行が存在したと認定した。
 その上で、就業規則の不利益変更の要件を充たすか否かの検討をし、財政状況が悪化していること(同社の収益のほとんど全てが大阪市からの受託収入であるから、大阪市が委託費用を減額すれば必然的に同社の収支は悪化する)、原告らが被る不利益は格別大きいものではないこと、多数派組合が本件賃金改定に同意していることなどから、不利益変更の合理性があるとした。

 これに対し、大阪高等裁判所平成18年12月22日判決は、減額を違法と判決した。
 判決は、初任給基準改定により在籍従業員の賃金が増減するという規範が確立していたとはいえないとした認定した。
 過去の労使交渉においても就業規則の改定という形で問題が提起されたことはなかったこと、
 在籍従業員は過去に賃金改定について異議を述べたことはなかったが、それは過去に賃金が減額されたことがなく、初任給基準の記載が従業員にとって緊要な問題ではなかったからであること(賃金改定の妥結の結果を初任給基準に反映させていたに過ぎないこと)、
 初任給基準が在籍従業員の賃金増減の基礎額になるとか、その改定が賃金の増減に連動するなどという趣旨の規範内容について、特段の説明・周知された事実がないこと等の事実があることからすれば、「就業規則及びこれと一体をなすものとしての給与規程・初任給基準は、『成熟した労使慣行』に基づいて上記のような規範内容を含むものであるということはできず、本件給料改定は、就業規則及びこれと一体をなす下位規範の内容を変更したものと評価することはできないというべきである」とした。
その結果、本件賃金改定は、「判例上許される就業規則の不利益変更という方法によらずに、従業員に不利益に変更したものであり、法律上の正当な根拠に基づくものということはできず、無効である」と結論づけた

結局は、人事委員会報告の支給率に準拠、連動するという減額方式が、純粋の民間会社と同様に、「就業規則の不利益変更」という形を履践しているのか、かつ許される不利益変更の要件を満たしているかという判断になろう。


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