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2016.12.08 Thu
中学校のクラブ活動である剣道部活動中に、顧問教諭が女子生徒の腰部を痛みを感じるような強さで蹴りつけることは、生徒の冗談に突っ込みを入れる気持ち・親しみを込める気持ちであったとしても、違法な有形力の行使である暴行に該当し、国家賠償法上違法な行為に当たるとされた事例
中学校のクラブ活動である剣道部活動中に、顧問教諭が女子生徒の腰部を痛みを感じるような強さで蹴りつけることは、生徒の冗談に突っ込みを入れる気持ち・親しみを込める気持ちであったとしても、違法な有形力の行使である暴行に該当し、国家賠償法上違法な行為に当たるとされた事例

東京高等裁判所平成17年12月22日判決(控訴人生徒、被控訴人横浜市)
判例タイムズ1237号285頁

 「教諭が一審原告を蹴ったいきさつについて、教諭の陳述書には、一審原告が友人に「ああ疲れた、私も年ね」と言ったので、「何言っているんだ、まだ若いくせに」と部活の顧問と部員の親しみを込めて蹴った旨の部分があり、その場に居合わせた生徒の陳述書中にも、一審原告の冗談を受けて、あるいは冗談に突っ込みを入れるという感じで、軽く蹴った旨の部分があるのに対し、一審原告は、友人と話をしているといきなり蹴られた旨供述し、なぜ蹴られたのか説明がない。部活の練習中に無駄話をしたことに対する注意あるいは体罰として蹴ることは一般論としてはあり得ることであるが、教諭は部員に注意するために手を出したり蹴ったりすることは一切ない旨の部分に照らせば、教諭が蹴ったのは体罰あるいは注意の手段としてではなく、教諭の陳述書のとおりのいきさつであったと認めるのが相当である。
 もっとも、その蹴りの強さについては、一審原告は「そんなに弱くはなくて、だからといってそう強くもなかったという感じです。でもバランスを崩すくらい強かった。」旨供述しており、同一審原告が帰宅後一部始終を母親に話し、整形外科へ赴き診療を受け、医師にも先生に腰を蹴られた旨述べていることに照らしても、痛みを感じ、それが持続する程度の強さであったことが認められ、これに反する部分は信用できない。
 教諭としては、一審原告の冗談に突っ込みを入れる気持、親しみを込める気持であったとしても、教師が生徒を背後から突然痛みを感じるような強さで蹴りつけることは違法な有形力の行使である暴行に該当するというべきである。」


 判決は、教諭の失言(生徒を「やくざ」と評するような発言)については、
 「教師が自由闊達な授業を心がけ、率直に生徒とふれ合う時、その触れ合いの中で生徒に対する言動が思わぬ波紋を呼ぶことは避けられないことであって、個々に授業中の言動を取り上げ、波紋の及んだ結果から見れば、その言動が教育上の配慮を欠く不適切なものであったといえても、授業全体の中で見れば、それが生徒に対する悪意によるものではなく、単なる失言と評価すべきものであることが明らかで、生徒に与える悪影響がそれほど大きなものとはいえない場合は、この言動を捉えて生徒に対する国家賠償法1条1項にいう違法行為とまで認めることはできない。」としている。

 判例は、教師による教育活動として生徒との接触交流を広く認めながらも、有形力の行使に関しては厳格に禁止するという態度であるといえる

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2016.11.09 Wed
高校柔道部の女子生徒が練習試合中に頭部を打ち重篤な後遺障害が生じたことについて、顧問教諭には女子生徒を練習試合に出場させた過失があるとされた事例
 高校柔道部の女子生徒が練習試合中に頭部を打ち重篤な後遺障害が生じたことについて、顧問教諭には女子生徒を練習試合に出場させた過失があるとされた事例

札幌地方裁判所平成24年3月9日判決 
原告:生徒外 被告:北海道
判例時報2148号101頁

 教育活動の一環として行われる学校の課外の部活動においては、生徒は担当教諭の指導監督に従って行動するのであるから、指導教諭は、できる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を具体的に予見し、その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置を採るべきである。とりわけ部活動において、柔道の指導に当たる教諭は、柔道が互いに相手の身体を制する格闘技能の修得を中心として行われるものであり、投げ技等の技をかけられた者が負傷する事故が生じやすく、ラグビーと並んで部活動における死亡確率及び重度の負傷事故の発生確率が他の種目と比較して有意に高いものであって、年間2名ないし3名程度の死亡者が存在するという状況にあることから、生徒の健康状態や体力及び技量等の特性を十分に把握して、それに応じた指導をすることにより、柔道の試合又は練習による事故の発生を未然に防止して事故の被害から当該生徒を保護すべき注意義務を負うというべきである。

 急性硬膜下血腫は、外傷により脳と硬膜の間に血腫が広がった病態であって、重症の急性硬膜下血腫についてはスポーツに復帰することは不可能であり、軽症の急性硬膜下血腫についても、血管が内膜、中膜及び外膜を含めて通常の強度を再度獲得するには最低でも1、2か月は必要である上に、受傷前と全く同様の強度を得られるとは限らず、短期間でスポーツに復帰することは、いわゆるセカンドインパクトシンドローム(一度衝撃によりダメージを受けた脳に対して二回以上の同様のダメージを受けることによって軽症であった患部のダメージが広がり致命的になる症候群)を惹起する可能性があることが認められる。

 急性硬膜下血腫の一般的な危険性に照らせば、本件柔道部の指導教諭らにおいては、原告に急性硬膜下血腫が生じたことを認識した以上、本件事故当時において、原告が頭部に衝撃を受けた場合の危険性が格別に高いことを当然に認識すべきであった。

 原告の受身を含む柔道の技能がさほど高くなかったことを併せ考慮すれば、原告を本件練習試合に出場させた場合、対戦相手から、原告が十分に対応できない技を仕掛けられて頭部を打ち付けるなどする可能性が相応にあったものと認められる。

 本件顧問教諭らは、原告を本件練習試合に出場させるべきではなかったにもかかわらず、これを怠り、漫然と原告を本件練習試合に出場させた過失があるというべきである。


 「柔道はラグビーと並んで部活動における死亡確率及び重度の負傷事故の発生確率が他の種目と比較して有意に高いものである」とされている。
 大阪地方裁判所平成5年12月3日判決(判例タイムズ868号234頁)は、高校ラグビー部の紅白試合でスクラム中に1年生徒が頸髄損傷を負ったことについて、指導教諭の安全配慮義務違反を認めている。
 「1年生である原告を左プロップにつけ、前記のような編成の紅白試合に参加させたことから、指導者である教諭には、試合の具体的局面において適切な管理をし、原告の安全に十分配慮し、危険の発生を未然に防止すべくより細心の注意が要求されていたのに、実際には、教諭においては、めくれ上がりの危険に対する認識が十分でなかった上に、レフェリーに徹していたために、Aチームの押しが強くBチームは盛り上がり気味となり、第8回目のスクラムではAチームが大幅に押し進みBチームは後退し、スクラムの盛り上がりの状態も原告が首を抜くほどであったことや、それらの事態のもたらす危険性を看過し、右のような危険な状況が再び発生しないよう適切な措置を講ずることもなく、試合を続行させたものというほかない。このことが安全配慮義務に違反すること、及び、そのことと本件事故の発生との間の因果関係があることは明らかであるといわざるをえない。」としている。

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2016.09.15 Thu
関西合同法律事務所のホームページ
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2016.05.26 Thu
中学校生徒が柔道部の顧問教諭との乱取り稽古中に重傷を負った事故について、指導に見せかけた暴行制裁を加えたという故意があったとまでは認められないものの、顧問教諭の過失があるとされた事例
 中学校生徒が柔道部の顧問教諭との乱取り稽古中に重傷を負った事故について、指導に見せかけた暴行制裁を加えたという故意があったとまでは認められないものの、顧問教諭の過失があるとされた事例
 横浜地方裁判所平成23年12月27日判決 (原告生徒外、被告横浜市外)
判例タイムズ1378号122頁

 柔道は技能を競い合う格闘技であり、本来的に一定の危険が内在しているから、学校教育としての柔道の指導、特に、心身ともに未発達な中学の生徒に対する柔道の指導にあっては、その指導に当たる者は、柔道の試合又は練習によって生ずるおそれのある危険から生徒を保護するために、常に安全面に十分な配慮をし、事故の発生を未然に防止すべき一般的な注意義務を負う(最高裁平成6年(オ)第1237号 同9年9月4日第1小法廷判決・裁判集民事185号63頁参照)。

 柔道の死亡事故の60~70%以上が、急性硬膜下血腫を原因としていると認められる。また、柔道は格闘技であり、死亡や重大な傷害が生じる危険のあることは、一般的に知られているところである(公知の事実)。

 被告教諭は、絞め技により、原告を「半落ち」状態に陥らせ、その後、覚醒させたものの、原告は、意識がもうろうとし、通常時よりも受け身がとりづらく、また、首の固定が十分ではないため頭部に回転力が加わりやすい状態にあったのであり、そのような状態で乱取りを続ければ、重大な傷害の結果が生じる危険性があったものということができる。そして、そのことを柔道の指導者である被告教諭は認識することができたものというべきである。それにもかかわらず、被告教諭は、原告一郎が上記の状態にある中で、原告を休ませることなく、そのまま乱取りを再開し、3セット目の終了のブザーが鳴った後も、組み合ったまま、4セット目に入り、乱取りを行っており、その結果、原告の傷害を生じさせている。
 以上からすると、上記「半落ち」後にそのまま乱取りを再開すれば、原告に重大な傷害結果が生じ得ることは、被告教諭において、予見することができたといえる。そして、原告が中学3年生であることに照らすと、教師である被告教諭においては、乱取りを中止したり、休憩を取らせるなどして、原告の意識が正常な状態に回復するのを待つべき義務を負っていたといえる。しかるに、被告教諭は、そのような措置を取らず、そのまま乱取りを再開し、原告に傷害を負わせたのであるから、上記義務を怠った過失があると認められる。


 部活の顧問教諭が生徒に対し故意に制裁を加えたという主張を裁判で立証することは、閉鎖的な空間である学校部活を舞台とする以上、たいへん困難であろう。
 柔道の死亡事故の60~70%以上が、急性硬膜下血腫を原因としていると認められ、柔道は格闘技であり、死亡や重大な傷害が生じる危険のあることは公知の事実であるとして、顧問教諭の過失を認定している。

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2016.04.05 Tue
軍事オンブズマン
 海上自衛隊員が護衛艦乗船中に自殺したことにつき、上官の誹謗的言辞が指導の域を超えるものであるとして、国の安全配慮義務違反が認められた事例において、遺族による不法行為の再発予防請求権に基づく「軍事オンブズパーソン制度」の創設請求は認められないとされた事例

福岡高等裁判所平成20年8月25日判決
判例時報2032号52頁

 軍事オンブズパーソン制度の創設請求の可否について
 控訴人らは、不法行為の被害者自身及びこれと一定の関係に立つ者は、不法行為の再発予防請求権を有すると解すべきであると主張するが、国家賠償法及び民法その他の規定に照らしても、上記のような権利を基礎づけると認められる規定は見当たらないから、本件損害に対する賠償としては上記の金銭賠償によるほかなく、控訴人らの上記主張は採用できない。なお、被控訴人は、控訴人らの軍事オンブズパーソン制度の設置請求に係る訴えの却下を求めているが、同請求は、不法行為(国家賠償法1条)の成立を前提に、その効果として同制度の設置を求めるものであるから、訴訟要件を欠くものとはいえない。


 軍事オンブズマン制度は、スウェーデン・フィンランド・ノルウェー・デンマークやドイツで兵士の待遇改善やいじめ防止を目的に導入されている。
ドイツでは連邦議会が軍事オンブズマン(防衛監察委員)を任命し、兵士は上官を通さず監察委員へ通報する権利が保障され、監察委員は事前通告なしで軍施設に立ち入り調査する権限があるとされている。

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