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2006.12.11 Mon
二重訴訟ー判決の既判力
中国地方の弁護士さんから突然電話がかかってきた。判例タイムズ936号245頁に掲載されている判決について教えてほしいという問い合わせだ。事件処理のため判例検索していたら出てきたらしい。

大阪地方裁判所が平成8年9月27日になした判決で、確かに僕が原告代理人ではあるが、判例タイムズに掲載されていることも、判例検索データベースに収録されていることも今の今まで知らなかった。
事件自体は思い出したが、10年以上前のことで、主張立証の詳細は思い出せずに、ちゃんとした回答ができなかった(当然といえば当然だけど)。

判決文を読み直すと
珍しい判決であることはそのようだ。

建物収去土地明渡の債務名義によって、建物退去土地明渡の執行ができるるか否かについて検討する。
1 建物収去土地明渡の債務名義は土地を占有する権原を有しない者が土地上に所有する建物の排除を命ずるものであり、建物退去土地明渡の債務名義は土地を占有する権原を有しない者が建物内に居住することによってその敷地である土地を占有するのを排除するため、建物からの退去を命ずるものである。そして、両者はその執行方法を異にするのみならず、建物所有者すなわち建物収去土地明渡の債務名義の執行債務者が当然に建物居住者すなわち建物退去土地明渡の債務名義の執行債務者であるわけではないのであるから、建物収去土地明渡の債務名義が概念上当然に建物退去土地明渡の債務名義を含むものということはできない。
 そして、以上の理は、建物収去土地明渡請求或いは建物退去土地明渡請求が、土地所有権に基づく妨害排除請求としてなされる場合であっても、土地賃借権に基く妨害排除請求としてなされる場合であっても、何ら異なるところはない。

2 ところで、建物所有者が建物内に居住する場合には、別個の検討が必要である。すなわち、建物所有者に対し建物収去土地明渡の請求をする場合、建物所有者以外の者が建物内に居住すれば、同人に対して併せて建物退去土地明渡の請求をするのでなければ、完全な土地明渡を実現することはできない。しかしながら、建物所有者か居住する場合には、建物収去土地明渡のほか、重ねて建物退去を求める必要はない。それは、このような場合の建物収去土地明渡は、その執行の過程において、居住している建物所有者の退去が当然に予想されており、建物所有者は建物収去の時期において建物を退去すべき義務があるからである。そして、このように解される以上、この場合の建物収去土地明渡の債務名義には建物退去土地明渡の債務名義も含まれていると解されるのである。

3 ところで、建物所有権が第三者に移転した場合には、従前の建物所有者に対する建物収去土地明渡の執行は不能となる。しかしながら、その場合であっても従前の建物所有者がなお建物に居住するときには、建物収去土地明渡の債務名義には建物退去土地明渡の債務名義も含まれていると解される以上、なお建物退去土地明渡の債務名義としての効力を有していると解されるのである。

4 (1)原告は、本件確定判決は、土地賃貸借契約の終了(解除)に基き貸主である原告が借主である被告Y1に対し有する建物収去土地明渡請求権(債権的請求権)を認めたものであり、これに対し、本件訴は、土地賃借権を有する原告が土地賃借権に基き建物占有者である被告に対し建物退去土地明渡を求めるものであるから、両者は別件であって、本件訴は訴の利益を欠くものではないと主張する。
(2)しかしながら、本件確定判決による建物収去土地明渡の債務名義によって建物退去土地明渡の執行をなし得る以上新たに建物退去土地明渡の判決を求める利益はない。これは、前訴が土地賃貸借契約の終了(解除)に基く請求権であり、本訴が土地賃借権に基く妨害排除請求権であって、その法的性質が異なるとしても同じである。
 原告の右主張には理由がない。

(3) また、原告は、被告Y1は、本件確定判決の確定前には本件建物に入居していなかったが、本件確定判決の確定後に本件建物に入居し、かつ従業員を住まわせて占有を新たに開始したのであって、本件訴は、右占有を排除するため建物退去土地明渡を求めるものであるから、訴の利益を欠くことはないと主張する。
(4) しかしながら、被告Y1の占有に関しては、本件確定判決によってその排除の執行ができるのであり、また従業員の占有については当該従業員を相手方として別個に債務名義を取得しなければならないのであって、被告Y1に対する債務名義によって従業員に対して排除の執行ができるはずもないのである。したがって、原告の右主張にも理由がない。

5 以上によれば、結局被告Y1の本案前の申立には理由があり、被告Y1に対する本件訴は却下を免れない。


なぜ思い出せないのか?!
それは控訴審の大阪高等裁判所で、却下のついて逆転して勝訴したので、地裁の敗訴は忘れてしまったからだろう。

大阪高等裁判所は次のようにいう
「本件確定判決は、転貸借契約の終了に基づき、転貸主たる控訴人が転借主たる被控訴人に対して有する建物収去土地明渡請求を認容したものである。
本訴は、借地権に基づき、借地人たる控訴人が、不法占有している被控訴人に対し、建物退去土地明渡を請求するものである。
よって、本件確定判決の訴訟物と本訴の訴訟物は別異であって、両者が二重訴訟の関係にあるとか、前者の既判力によって後者の訴えの利益がなくなるとかいうことはできない。
本件訴えを却下することはできない。」


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