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2016.03.06 Sun
大阪市の外郭団体が、従業員に対し、大阪市人事委員会報告に準拠して賃金減額を行ったことが違法であるとし、差額賃金の支払を命じた事例
大阪市の外郭団体が、従業員に対し、大阪市人事委員会報告に準拠して賃金減額を行ったことが違法であるとし、差額賃金の支払を命じた事例

大阪高等裁判所平成18年12月22日判決 判例集未登載 河村学弁護士による記事 

大阪運輸振興株式会社は、大阪市交通局が実質100%出資する大阪市の外郭団体である
業務としては、大阪市営地下鉄の車庫業務、大阪市営バスの運行受託、案内所業務、乗車券販売業務などを行っている
大阪市の退職者の雇用確保等のために市が主導して設立した株式会社であり、大阪市が実質的な支配株主で、かつ、会社取締役や役職者は派遣職員とOBで占められている。同社は、大阪市の監理団体とされ、経営に関し大阪市が指導権限を有し、その内容については市議会への報告が義務づけられている。

 大阪運輸振興の従業員の給料は、経歴加算された初任給基準に、年2回一定額の昇給がなされる旨の規定があるのみで、賃金減額の方法や新規採用者以外の賃金が初任給基準により算定されるという規定はなかった。同社従業員のベースアップについては、大阪市職員の給与についての人事委員会報告の支給率に準拠、連動して増額改定が行われてきた。

 就業規則の下位規範である初任給基準を大阪市職員の給与についての人事委員会報告の支給率に準拠、連動して改定することにより一方的に減額できるかというのが争点となった

 大阪地方裁判所平成18年3月8日判決は、減額が合法であると判決した。
 まず、在籍従業員の賃金改定については、従前の賃金額に一定率を乗じることによって画一的に改定されてきたこと、及び、就業規則の下位規範である初任給基準を改定することにより、その改定された支給率の内容を在籍従業員の賃金にも反映させるという労使慣行が存在したと認定した。
 その上で、就業規則の不利益変更の要件を充たすか否かの検討をし、財政状況が悪化していること(同社の収益のほとんど全てが大阪市からの受託収入であるから、大阪市が委託費用を減額すれば必然的に同社の収支は悪化する)、原告らが被る不利益は格別大きいものではないこと、多数派組合が本件賃金改定に同意していることなどから、不利益変更の合理性があるとした。

 これに対し、大阪高等裁判所平成18年12月22日判決は、減額を違法と判決した。
 判決は、初任給基準改定により在籍従業員の賃金が増減するという規範が確立していたとはいえないとした認定した。
 過去の労使交渉においても就業規則の改定という形で問題が提起されたことはなかったこと、
 在籍従業員は過去に賃金改定について異議を述べたことはなかったが、それは過去に賃金が減額されたことがなく、初任給基準の記載が従業員にとって緊要な問題ではなかったからであること(賃金改定の妥結の結果を初任給基準に反映させていたに過ぎないこと)、
 初任給基準が在籍従業員の賃金増減の基礎額になるとか、その改定が賃金の増減に連動するなどという趣旨の規範内容について、特段の説明・周知された事実がないこと等の事実があることからすれば、「就業規則及びこれと一体をなすものとしての給与規程・初任給基準は、『成熟した労使慣行』に基づいて上記のような規範内容を含むものであるということはできず、本件給料改定は、就業規則及びこれと一体をなす下位規範の内容を変更したものと評価することはできないというべきである」とした。
その結果、本件賃金改定は、「判例上許される就業規則の不利益変更という方法によらずに、従業員に不利益に変更したものであり、法律上の正当な根拠に基づくものということはできず、無効である」と結論づけた

結局は、人事委員会報告の支給率に準拠、連動するという減額方式が、純粋の民間会社と同様に、「就業規則の不利益変更」という形を履践しているのか、かつ許される不利益変更の要件を満たしているかという判断になろう。


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