大阪市北区にある関西合同法律事務所 弁護士歴30年井上直行のBlog エッセイならぬdessay です
法律事務所随想 | 弁護士つれづれ | 裁判所周辺の四季 | 裁判 | 憲法 | 教育・学校 | 土地建物 | 事故 | 労働 | セクハラ・パワハラ | 家族 | 離婚 | 遺言 | 商事 | カードサラ金借金 | 消費生活 | 環境 | 被害者 | 刑事 | 書評 | 旧所名跡 | 落語・漫才 | チャングム | 未分類 | 
弁護士井上直行です
リンクです
FC2カウンター
井上直行 弁護士ブログ  関西合同法律事務所 デッセイ
≪2017.10  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  2017.12≫
最新記事
2017.11.01 Wed
高校柔道部の女子生徒が練習試合中に頭部を打ち重篤な後遺障害が生じたことについて、顧問教諭には女子生徒を練習試合に出場させた過失があるとされた事例
 高校柔道部の女子生徒が練習試合中に頭部を打ち重篤な後遺障害が生じたことについて、顧問教諭には女子生徒を練習試合に出場させた過失があるとされた事例

札幌地方裁判所平成24年3月9日判決 
原告:生徒外 被告:北海道
判例時報2148号101頁

 教育活動の一環として行われる学校の課外の部活動においては、生徒は担当教諭の指導監督に従って行動するのであるから、指導教諭は、できる限り生徒の安全にかかわる事故の危険性を具体的に予見し、その予見に基づいて当該事故の発生を未然に防止する措置を採るべきである。とりわけ部活動において、柔道の指導に当たる教諭は、柔道が互いに相手の身体を制する格闘技能の修得を中心として行われるものであり、投げ技等の技をかけられた者が負傷する事故が生じやすく、ラグビーと並んで部活動における死亡確率及び重度の負傷事故の発生確率が他の種目と比較して有意に高いものであって、年間2名ないし3名程度の死亡者が存在するという状況にあることから、生徒の健康状態や体力及び技量等の特性を十分に把握して、それに応じた指導をすることにより、柔道の試合又は練習による事故の発生を未然に防止して事故の被害から当該生徒を保護すべき注意義務を負うというべきである。

 急性硬膜下血腫は、外傷により脳と硬膜の間に血腫が広がった病態であって、重症の急性硬膜下血腫についてはスポーツに復帰することは不可能であり、軽症の急性硬膜下血腫についても、血管が内膜、中膜及び外膜を含めて通常の強度を再度獲得するには最低でも1、2か月は必要である上に、受傷前と全く同様の強度を得られるとは限らず、短期間でスポーツに復帰することは、いわゆるセカンドインパクトシンドローム(一度衝撃によりダメージを受けた脳に対して二回以上の同様のダメージを受けることによって軽症であった患部のダメージが広がり致命的になる症候群)を惹起する可能性があることが認められる。

 急性硬膜下血腫の一般的な危険性に照らせば、本件柔道部の指導教諭らにおいては、原告に急性硬膜下血腫が生じたことを認識した以上、本件事故当時において、原告が頭部に衝撃を受けた場合の危険性が格別に高いことを当然に認識すべきであった。

 原告の受身を含む柔道の技能がさほど高くなかったことを併せ考慮すれば、原告を本件練習試合に出場させた場合、対戦相手から、原告が十分に対応できない技を仕掛けられて頭部を打ち付けるなどする可能性が相応にあったものと認められる。

 本件顧問教諭らは、原告を本件練習試合に出場させるべきではなかったにもかかわらず、これを怠り、漫然と原告を本件練習試合に出場させた過失があるというべきである。


 「柔道はラグビーと並んで部活動における死亡確率及び重度の負傷事故の発生確率が他の種目と比較して有意に高いものである」とされている。
 大阪地方裁判所平成5年12月3日判決(判例タイムズ868号234頁)は、高校ラグビー部の紅白試合でスクラム中に1年生徒が頸髄損傷を負ったことについて、指導教諭の安全配慮義務違反を認めている。
 「1年生である原告を左プロップにつけ、前記のような編成の紅白試合に参加させたことから、指導者である教諭には、試合の具体的局面において適切な管理をし、原告の安全に十分配慮し、危険の発生を未然に防止すべくより細心の注意が要求されていたのに、実際には、教諭においては、めくれ上がりの危険に対する認識が十分でなかった上に、レフェリーに徹していたために、Aチームの押しが強くBチームは盛り上がり気味となり、第8回目のスクラムではAチームが大幅に押し進みBチームは後退し、スクラムの盛り上がりの状態も原告が首を抜くほどであったことや、それらの事態のもたらす危険性を看過し、右のような危険な状況が再び発生しないよう適切な措置を講ずることもなく、試合を続行させたものというほかない。このことが安全配慮義務に違反すること、及び、そのことと本件事故の発生との間の因果関係があることは明らかであるといわざるをえない。」としている。




スポンサーサイト

テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
教育・学校    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2017.10.02 Mon
シルバー人材センターと会員の関係は雇用契約ではなく請負契約であるが、注文者が請負人を直接間接に指揮監督して工事を施工させているような場合は注文者は使用者責任を免れないとして、会員の不法行為につきシルバー人材センターの使用者責任を認めた事例
 シルバー人材センターと会員の関係は雇用契約ではなく請負契約であるが、注文者が請負人を直接間接に指揮監督して工事を施工させているような場合は注文者は使用者責任を免れないとして、会員の不法行為につきシルバー人材センターの使用者責任を認めた事例

大阪地方裁判所平成14年8月30日判決
労働判例837号29頁

 請負人は、その判断と責任において仕事を遂行するのが原則であるから、注文者との間には使用関係はないのが通常である(民法716条本文参照)が、注文者が請負人を直接間接に指揮監督して工事を施工させているような場合には、注文者と請負人の間には実質的な使用関係があるものとして、請負人の不法行為について注文者は使用者責任を免れないと解するのが相当である。

 被告は、各会員の作業それ自体について個々具体的な指揮監督関係があったかどうかはともかくとして、会員の提供する労務の品質の保持を図るため、班長に対しては請負人である天王寺動物園清掃班班員の作業時間作業内容などについて連絡調整や作業指導状況報告をさせ、これをもって管理・監督を行わせていたのであるから、班長が行うべきものとされた前記業務との関係においては、被告との間に実質的な指揮監督関係があったと評価せざるを得ない。


シルバー人材センターでは全国で80万人の人(会員)が働いています
センターと会員とは請負または委任の関係とされているので、事故が発生した場合に問題が生じます。契約の形式ではなく、実質に即した法理が必要となります。





テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
労働    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2017.09.04 Mon
県立高校のテニス部の屋外の練習中に部員が倒れて心停止となり重度の後遺症が生じた事故について顧問の教諭の注意義務違反を認めて損害賠償金の支払を命じた事例
県立高校のテニス部の屋外の練習中に部員が倒れて心停止となり重度の後遺症が生じた事故について,原判決を取り消し,熱中症の罹患による重度の心筋障害が心停止の原因であると認め,顧問の教諭の注意義務違反を認めて損害賠償金の支払を命じた事例

大阪高等裁判所平成27年1月22日判決
判例時報2254号27頁

ア 校外での練習への立会義務違反の有無について
   控訴人は,本件事故を予見できたにもかかわらず,自ら本件事故当日の部活動に立ち会うことなく,また,代わりに立ち会う教諭を手配することをしなかったことから,教諭には,立会義務違反があると主張する。
   課外のクラブ活動が本来生徒の自主性を尊重すべきものであることにかんがみれば,何らかの事故の発生する危険性を具体的に予見することが可能であるような特段の事情のある場合は格別,そうでない限り,顧問の教諭としては,個々の活動に常時立ち会い,監視指導すべき義務までを負うものではないと解するのが相当であり,これは校外での部活動でも基本的に変わるものではない。

イ 生徒の体調等に配慮した練習軽減措置等の義務違反の有無について
 顧問が練習メニュー,練習時間等を各部員に指示しており,各部員が習慣的にその指示に忠実に従い,練習を実施しているような場合には,顧問としては,練習メニュー,練習時間等を指示・指導するに当たり,各部員の健康状態に支障を来す具体的な危険性が生じないよう指示・指導すべき義務があると解するのが相当である。
 熱中症の危険因子としては,スポーツの強度や負荷の程度が重要であることはいうまでもないが,このほか,①気温・湿度,②暑さに対する慣れ(暑熱馴化),③水分補給,④透湿性・通気性の良い帽子・服装の着用,⑤生活習慣(睡眠不足,風邪,発熱,下痢などの体調不良等)が発症に影響を及ぼす要因になると考えられる。
 平日の練習が午後4時から午後6時30分までであったものが,それを超過する3時間程度のものになっていた上,通常の練習の時間帯よりもより日差しが強くなりやすい時間帯に設定されたことを考慮すると,その練習メニューは,女子高校生である部員らに対する負荷の程度は相当に重いものであったというほかない。
 さらに,本件練習当日は,本件高校の定期試験の最終日であり,生徒である部員らがその試験勉強のために十分な睡眠をとることができていない可能性があることは教諭も認識していたことが認められる。
 また,本件事故当日は初夏であり,既に前日等において当該地域では25度を超える気温となっており,当日は天候も良く,本件テニスコート内の気温が上昇して30度前後となるであろうこと,本件テニスコート内にはめぼしい日陰もなかったこと,控訴人が帽子を着用していなかったことについても,練習当初の約30分間指導していた教諭は認識し,少なくとも十分に認識し得たといえる。加えて,当時キャプテンになったばかりであった控訴人にとっては,本件事故当日は,教諭がほとんど立ち会わない中でキャプテンとして部員らを指示しながら練習をした初めての日であるから,その練習の配分の指示や段取り等に馴れていなかったと考えられ,その真面目な性格に鑑みても,教諭の事前のメモによる指示に忠実に従い,無理をしてでも,率先して練習メニューをこなそうとすることが教諭において想定できたと認められる。
 以上の各事情を踏まえると,本件練習に立ち会うことができず,部員の体調の変化に応じて時宜を得た監督や指導ができない以上,教諭においては,控訴人を含めた部員らの健康状態に配慮し,本件事故当日の練習としては,通常よりも軽度の練習にとどめたり,その他休憩時間をもうけて十分な水分補給をする余裕を与えたりするなど,熱中症に陥らないように,予め指示・指導すべき義務があったといえる。
  それにもかかわらず,教諭は,通常よりも練習時間も長く,練習内容も密度の高いメニューを控訴人に指示した上,水分補給に関する特段の指導もせず,水分補給のための十分な休憩時間を設定しない形で練習の指示をしていたことが認められる)。
 したがって,教諭は,上記義務に違反したものというほかない。

顧問教諭に、練習常時立ち合い義務があることは否定しましたが、生徒の体調等に配慮した練習軽減措置等の義務のあることは認め、熱中症の危険因子に照らして、当日の練習軽減措置義務違反を認定しました。





テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
教育・学校    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2017.08.05 Sat
寺院境内墓地において、寺院の定める方式に従い墓地を使用する旨の合意があっても、その拘束力は墓地使用権を承継した者には及ばないとし、承継者による無典礼の方式による遺骨の埋蔵を拒絶することはできないとされた事例
 寺院境内墓地において、寺院の定める方式に従い墓地を使用する旨の合意があっても、その拘束力は墓地使用権を承継した者には及ばないとし、承継者による無典礼の方式による遺骨の埋蔵を拒絶することはできないとされた事例

宇都宮地方裁判所平成24年2月15日判決
判例タイムズ1369号208頁

主文
 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の墓地内の別紙図面の墓地区画への無典礼の方式による別紙遺骨目録記載の遺骨の埋蔵を妨害してはならない。

理由
 本件墓地は寺院墓地であり、その墓のほとんどは浄土真宗本願寺派の典礼に従い使用されてきたことが認められ、原告の祖先が被告との間で本件墓地使用権の設定を合意するに当たっても、被告の定める典礼の方式に従い墓地を使用するとの黙示の合意が成立したものと認めるのが相当である。
 しかしながら、本件墓地使用権を承継した者が異なる宗派となった場合にまで上記の黙示の合意の拘束力が及ぶかどうかについて、これを定めた墓地使用規則はなく、また、その場合にも被告の典礼の方式に従うとの慣行があったことを認めることもできない。以前は、いくつかの異宗派の者が、その宗派の定める典礼の方式により本件墓地内に墓石を設置し、遺骨を埋蔵していても、被告が寺として異議を述べた事情は認められない。そして、原告も、浄土真宗本願寺派とは異なる題目の墓石を設置し、法名の授与を受けずに遺骨を埋蔵していたものである。
 以上によれば、上記の黙示の合意の解釈として、本件墓地使用権を承継した者が異なる宗派となった場合に、その者に対し被告の属する浄土真宗本願寺派の典礼の方式に従うことを求める効力があるとするのは困難であり、その者が浄土真宗本願寺派とは異なる宗派の典礼の方式を行うことを被告が拒絶できるにすぎないと解するのが相当である。


 寺院境内墓地においては、墓地使用はその寺院の檀信徒(檀家と信徒)であることが前提となっていることが通常である。墓地使用権者が後に改宗した場合、墓地使用権を失うのかという問題が発生する。
 
津地方裁判所昭和38年6月21日判決(下級裁判所民事裁判例集14巻6号1183頁)は、
「従来から寺院墓地に先祖の墳墓を所有するものからの埋葬蔵の依頼に対しては寺院墓地管理者は、その者が改宗離檀したことを理由としては原則としてこれを拒むことができない。」
 としつつ
 典礼の方式については、
「埋葬蔵が宗教的典礼を伴うことにかんがみ、右埋葬蔵に際しては寺院墓地管理者は自派の典礼を施行する権利を有し、その権利を差し止める権限を依頼者は有しない。
 従つて(1)異宗の典礼の施行を条件とする依頼(2)無典礼で埋葬蔵を行うことを条件とする依頼(異宗の典礼は施行しないが、当該寺院の典礼の施行も容認しない趣旨の依頼)
 このような依頼に対しては、寺院墓地管理者は自派の典礼施行の権利が害されるということを理由にしてこれを拒むことができる。」
としている。

  宇都宮地方裁判所平成24年2月15日判決は、承継者が改宗した場合には無典礼の方式による遺骨の埋蔵を拒絶することはできないとし、津地方裁判所昭和38年6月21日判決とは異なる判断をしたことになろう





テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
遺言    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑

2017.07.06 Thu
農業用水路転落事故
近年、農業用水路への転落事故が発生し、かけがえのない命が失われています
農業用水路は法定外公共物にあたり、その維持管理の責任は地方自治体にあります

農業用水路の設置管理を問う事例がありますが、裁判所の判断は分かれています

農業用水路は、稲の成育に必要な水温を保つ必要があることや
農業従事者が取水しやすいようにすることから原則は開渠で、転落防止柵も設置されない
また、稲の成育を阻害しないようにするために夜間の照明設備も設置されないのが原則である

横浜地方裁判所平成12年11月7日判決
本件用水路には、蓋、柵などの転落防止施設が設けられておらず、照明設備も設置されていなかったが
通常の利用方法の範囲内では、本件用水路に転落することはないものと認められる
管理者には用水路の設置管理に瑕疵はない

富山地方裁判所平成26年9月24日判決
平成15年以前は周辺は田んぼで主たる利用者は近隣の耕作者であり、
本件水路を越えて耕作地に進入する者もこれらの者に限られていた。
通行時間は日中であり、夜間の通行は見込まれていないことから、
本件水路への転落防止設備を設けなくてもさしたる問題はなかった。
しかし、その後市街化が進み、24時間営業の店舗が開店したのであるから、
管理者としては、通行状況の変化を把握し
本件側溝に蓋を設置するなどの対応を執るのに十分期間があった
本件水路は通常有するべき安全性を欠いていた
管理者には水路の設置管理に瑕疵があった




テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
事故    Comment(0)   TrackBack(0)   Top↑